レット・イット・ビー

恋に憧れていました。モテる為なら何でもしました。まず、髪型を変えました。黒髪ロングが男受けすると聞いたからです。ピンク色のショートヘアーだったわたしは、一年程かけて、肩まで髪を伸ばして黒く染めました。

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わたしは、恋と引き換えに、自分を失いました。次に、ダイエットしました。スタイルの良いひとが好きと誰かが言っていたからです。食事を減らして運動するだけではそれほど華奢な体型にならなかったので、食べる度に喉に手を突っ込んで吐き、それ以外の時間はひたすら動き回るようになりました。それで痩せたわたしは昔よりは男性からお声が掛かるようになりました。わたしは、恋と引き換えに、健康を失いました。

最後に、お化粧品を揃えました。お金が無かったので、夜の街でアルバイトもしました。その時は異様に口説かれました。遊ぶのにちょうどいい女として。恋と引き換えに、わたしは心を失いました。最終的には何も残りませんでした。わたしは空っぽになったのです。良い具合に、ふさわしい恋人が出来ました。わたしと同じように何も持っていない男性でした。彼は、地位も名誉もお金も健康も、すべてを引き換えにしてでも他人の愛情を求めている、空っぽの肉体だけを所持していました。似た者同士なのです。わたし達は、お互いに与え合う事を知らず、奪い合ってばかりだったので、すぐにお別れしました。

風の噂によると、彼は今入院中だそうです。昔はスゴイ奴だったと共通の知人が呟いていたのが妙に頭に残っています。さて、わたしはどうなるのでしょうか。わたしは今の自分が嫌いです。少なくとも、昔はもうちょっと良い奴だったと思います。恋に憧れた時、わたしは既に、歪んでいたのでしょう。自分に湧き上がる欲望が怖くて仕方ありません。そんな自分をわたしは愛せません。

自分を愛せない人間に他人を愛する事は出来ません。恋は、心でするものだからです。ありのままで居られた頃に帰ろう。わたしは、ふと、気づきました。作った自分を好きになってもらうのは偽物の恋だったと。本当の自分を愛して欲しいと。わたしは夜のアルバイトを辞めた後、空いた時間に失恋の歌を口ずさみながらこっそり泣きました。そして、顔を上げ、こう決めたのです。ありのままの自分に帰ろう。